技術ノート

栄養基準:なぜ FEDIAF を一次基準にするのか

わんぱくキッチンが栄養素の過不足を判定する物差しとして FEDIAF のガイドラインを一次基準にする理由、AAFCO を一次にしない理由、食材データの出所について説明します。

わんぱくキッチンは、栄養素が足りているか・多すぎるかを、FEDIAF Nutritional Guidelines(2025 年版) を一次の基準として判定しています。このページではその理由と、ほかの出典をどこまで使っているかを説明します。

基準値は「カロリーあたりの濃度」で比べます

栄養基準値は「1000 kcal ME あたりの量」で比べます。体重 3 kg のワンちゃんと 30 kg のワンちゃんでは食べる量がまったく違いますが、食事のカロリーあたりの濃度で見れば、同じ物差しで評価できます。だからこそ、分母にあたるカロリーの定義を基準値の出典と揃えることが重要になります(カロリーの定義)。

FEDIAF を一次にする理由

1. 摂取カロリーの違いが基準表の構造に入っている

FEDIAF は成犬の推奨最小値を、1 日の平均摂取エネルギーが代謝体重あたり 95 kcal の場合と 110 kcal の場合の 2 列 で示しています。あまりたくさん食べない犬は、同じ量の栄養素を少ないカロリーの中に収めなければならないので、必要な濃度が上がります。この当たり前の事実が、基準表の形そのものに反映されています。

わんぱくキッチンは、去勢・避妊済みの成犬に 95 列、未去勢・未避妊の成犬に 110 列を割り当てています。これはアプリが使っている維持カロリーの係数が、それぞれの列の想定に最も近く、しかもわずかに必要量を高めに見積もる側(安全側)に倒れるためです。列の間を補間して連続的に動かすことはしません。理由は画面表示とレシピの共有で説明します。

なお、カロリーの定義で触れたように、日本の室内飼育の小型犬では実際の摂取カロリーが 95 列の想定をさらに下回るという報告があります。その場合、95 列でもなお必要な濃度を低く見積もっている可能性があります。これは現時点で把握している限界です。

2. 「栄養学的な上限」と「法的な上限」が区別されている

FEDIAF は上限値を、栄養学的な理由による最大値(N)と、法令上の最大値(L)に分けて示しています。わんぱくキッチンは、カロリーあたりで示される栄養学的最大(N)を過剰判定の第一の物差しにしています。

3. エネルギーの計算方法が一致している

FEDIAF は NRC 2006 のエネルギー予測式を採用しています。わんぱくキッチンもレシピのカロリーを同じ式で計算しているので、レシピの栄養素量・レシピのカロリー・基準値の 3 つが同じ基準系に乗ります。

4. 独立した査読を経ている

FEDIAF のガイドラインは NRC の知見を取り込んだうえで、独立した栄養学者の委員会による査読を経ています。

一次基準と補助的な出典

AAFCO を一次にしない理由

AAFCO の栄養プロファイルは、市販フードの表示などで広く参照されている重要な基準です。それでも、手作りごはんの設計で過不足を判定する一次の物差しには採っていません。理由は 3 つです。

  1. 仮定したエネルギー密度で換算している:AAFCO の値は、乾物あたりの値を一定のエネルギー密度を仮定してカロリーあたりに換算したものです。手作りごはんのエネルギー密度はこの仮定から外れることが普通にあります。
  2. 修正アトウォーター式を前提にしている:カロリーの定義で触れたとおり、この式は消化しやすい食事のカロリーを低く見積もる傾向があります。分母が小さく出れば濃度は高く出るため、手作りごはんでは充足を実際より甘く見積もるおそれがあります。
  3. 摂取カロリーの水準が一つしかない:あまり食べない犬では、同じ濃度でも絶対量が足りなくなることを表現できません。

これは AAFCO が誤っているという意味ではありません。わんぱくキッチンが採っている「NRC 2006 の式で計算した ME」と組み合わせると、物差しの前提が揃わない、という意味です。

例外的に借りている規範

FEDIAF に栄養学的な上限が無いものの、手作りごはんでは過剰を見ておく必要がある栄養素があります。たとえば海藻によるヨウ素、レバーによる銅、サプリメントの計算違いが起きやすいセレンなどです。こうした項目に限って、次のような規範を 評価上限として個別に借りています。

  • FEDIAF の法的上限(L):乾物あたりの濃度なので、そのレシピの乾物の割合を使ってカロリーあたりに換算して使います
  • AAFCO の個別の上限(セレン、ω-6 と ω-3 の比):FEDIAF に該当する上限が無いため、出典を明記した参考規範として使います
  • FEDIAF が「ここまでは安全とするデータがある」と示している濃度(ナトリウム):毒性の確定した閾値ではなく、調味料の混入や入力ミスに気づくための線です

いずれも、AAFCO の栄養プロファイル全体を一次基準に差し替えるものではありません。法的上限は犬の毒性試験から導かれた値ではなく、「完全栄養食に許される濃度」の規範です。わんぱくキッチンはこれを「その濃度を超えた」という事実として示します。

基準の対象範囲

わんぱくキッチンが使い分ける基準列は、成長初期(生後 14 週未満)、成長後期(14 週以降で成熟前)、成犬の 3 段階です。FEDIAF の成長初期の列は出典上「成長初期・繁殖期」をまとめたものですが、わんぱくキッチンは妊娠・授乳期の計算をしていません。また、大型犬の成長期に関する FEDIAF の個別の注記(カルシウムの扱いなど)は、現在のライフステージの区切り方では分けていません。

食材データの出所

一次は日本食品標準成分表

食材の成分値は 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年 を一次の出典にしています。成分表の記号はそのまま意味を保って取り込んでいます。特に「微量(Tr)」と「未測定(-)」は区別します。前者は測ったうえで少なかったもの、後者は測っていないものです。両者を同じ 0 にすると、存在しない不足を作ったり、本当の不足を見逃したりするからです。

ビタミン A は、レチノールの値だけを使い、β-カロテンは足していません。犬は β-カロテンをビタミン A に変える効率が低く、人向けの換算をそのまま使うと、緑黄色野菜の多いレシピでビタミン A を多く見積もってしまうためです。

成分表に無いものは補い、確からしさを下げる

成分表に収載が無い、または欠けている項目(たとえばコリン、一部の食材のセレン)は、USDA FoodData Central などから補っています。補った値は出所を記録し、その栄養素の確からしさを一段下げて扱います。含量のばらつきが大きく、成分表の一つの値では評価しにくいものは、実績値にもとづく幅を使って評価します。

どの食材にもデータが無い栄養素では、合計が実際より小さく出ます。そこで、その栄養素についてデータのある食材がレシピのどれだけを占めているか(被覆率)も一緒に見て、被覆率が低いときは不足を強く言わず、「一部の食材でデータが未収載です」と添えます。詳しくは推定の幅、確からしさ、アラートの強さで説明します。

次に読む